<左上>
　さて、こちらは宮殿の一室にとり残されたトム。いつまで待っても王子はもどってこない。不安になって戸の方へ行こうとすると、戸があいて若い美しい姫君があらわれた。『お助けください。私はトムというこじきのこどもです』トムがひざまずくと。『まあ、王子さま、どう遊ばしたのですか？』
　びっくりして姫は逃げだして行く。間もなく、宮殿中に王子のきがくるったいう、うわさがひろがった。
<左中1>
　それを聞いて、おりから病気中の王は大変心配した。けらいに命じてトムを彼の病室へつれてこさせた。トムはふるえながら、両手をあわせて『王さま、どうか命ばかりはお助けを』王もやはりトムを王子とまちがえているので、なるほどこれはきちがいになったと思った。
　しかし、これが国中に知れては大変なので、秘密にしておくようにおそばの者に命令した。そこで、トムもほんとうのことがわかるまで、じぶんが王子になっておくより外はしかたないと、あきらめた。
<左中2>
　トムがじぶんのへやにもどってくると、そばつきのけらいたちが、『今夜は王子さまの歓迎のえん会がございますから、したくをいたしましょう』といって、さらにきれいな着物を着かえさせた。やがてトムは、大ぜいのけらいをしたがえて、ロンドンの市会堂の大えん会にのぞんだ。
　トムが正面の一だんと高い席につくとにぎやかなえん会ははじまった。トムはそばの者に教えられた通りに一同とともに祝盃をあげた。そして、目の前に見えるすばらしいおどりを、うっとりながめていた。
<左下>
　そこへ宮殿から使者が飛んできて、国王がおなくなりになったと、つたえた。しゅんかん一同はい一せいに頭をたれてだまっていたが、やがてトムの方へむかって、『国王へいかばんざい！』トムはぼんやりそれを見ていたが、こうなった以上しばらくじぶんが国王となって、情深い政治をしこうと思った。
　トムは立ち上がって、『今日かぎり血なまぐさい法律はやめて死刑囚をゆるす』というと一同は感激してふったび『国王へいかばんざい！』とさけんだ。