国王は目の前の森の中へはいって行くと、とっぷり日が暮れた。ふとあたりを見まわすと、一けんの小屋からあかりが見える。近づいて行って、とびらをたたくと、とびらがあいて、ぎらぎら光る目をした。ひとりの老僧がでてきた。
『お目は誰だ？』とたずねるので、国王だというと、だまって内へくれた。寝台のしたには、茶わんやなべやかまなどがころがり、奥の祭だんには、一本のろうそくがゆらめいている。彼はふたたびお前はどこの国王だとたずねる、もちろんイギリスの国王だと答えると、では、ヘンリーは死んだのかと聞く。
『そうだ、私はヘンリーの子だ』と、国王がうなずくと、その時、老僧の目はあやしく光って、がらりと、おそろしい顔つきにかわったーーー。
　　　　　　　　　　　（つづく）
　　　　　　　　　文・竹田靖治
かわいそうな王子ですね。いつ本当のこくおうになることができるでしょうか？
この老僧は、はたして誰でしょう。次号をお楽しみに・・・・